全米広告主協会 VS 米国広告業協会 不透明な広告リベートを糾弾

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今月7日(火)にANA(全米広告主協会)が出した「米国広告業界におけるメディアの透明性に関するレポート」にて、米国市場に不透明なリベートが蔓延していることが明らかになり、1926億ドル(2015年/Strategy Analytics調べ)と言われる巨大な広告市場に大きな波紋を呼んでいます。

K2
画像:Media Transparency Initiative: Overview | ANA

不透明な広告リベートが存在しているという情報を受け、P&Gやロレアル、コカコーラ、TOYOTA、アップルなどが名を連ねるANAは、4年前からメディアの透明性に焦点をあてた調査を行ってきました。今回の58ページにも渡るレポートは、調査会社K2 Intelligenceとともに昨年秋から7ヶ月かけて行われたもので、当レポートによって、広告代理店へのリベートを含む多数の不透明な商慣習が、米国メディア広告買い付けのエコシステム内に蔓延していることがわかりました。

今回は匿名の情報ソースの活用を行うことと、業界慣習の現状を明らかにすることが調査範囲となっており、様々な証拠が押さえられていると言われていますが、特定の企業の具体的な不正活動は明らかになっていません。なお、証拠を押さえているシークレットリベートの手口としては、代理店または持株/関連会社がメディアを買い付けた後、そこから30-90%水増しした価格でクライアントに提供するなどが挙げられています。

また、アドテク(ベンダー)周りの問題としては、

サービス協定
代理店の認定ベンダーになるためにサービス協定を結び、代理店からの不要なサービスの支払いを求められる

ブラックボックス取引
オンライン広告のプログラマティックバイイング向けの取引で、ベンダーが広告配信を行うまでに代理店グループのトレーディングデスクやアドテク資産を経由させることで価格を釣り上げる

条件付きエクイティ(Contingent equity)
代理店グループの”お気に入り”のアドテクベンダーや彼らが所有または投資しているメディアに広告費用を流し込む

などが挙げられています。

さらに、K2 Intelligenceは、このような事態が起こっている主な原因として下記の3点を挙げています。

  1. 広告主が代理店のフィーを押し下げ続け、また、支払条件も厳しいため、代理店がビジネスを継続するのが困難な状況であるため
  2. 広告主が急速に変化するメディアバイイング市場に対処しきれておらず、十分な専門知識が不足しているために、代理店に対して”正しい”質問ができていないため
  3. 広告主が代理店への”監査権”を完全に行使できていない、監査権が限定されている、または可能な監査権に気付いていないため

これに対して米国広告業協会(4A)は「メディアバイイングに関する健全で建設的な議論は、(ANA単独ではなく)二者間における積極的かつ業界全体にわたるアプローチがなければ起こりえません。ANAがやってきたことはまさにこれとは真逆のことです。今回発表されたK2レポートは匿名で要領を得ず、一方的であり、その発見自体の誠実さを低めるものでしかありません」としています。また、Business Insiderのリクエストに応じる形で、パブリシス・グループ、Interpublic Group、GroupM(WPP)、オムニコム、そして電通イージスネットワークがそれぞれBusiness Insiderに反論のコメントを寄せています。

大手広告代理店グループは、米国にてリベートの受け取りを拒否していると主張し続けていたため、今回のANAによる調査結果は業界全体に大きなインパクトを与えています(ちなみにヨーロッパ、中国、ブラジルのような市場ではリベートは一般的な商慣習)。

ANAはマーケターができることとして、現在利用している代理店との契約再交渉を提案しています。なかには調査会社と協力して、代理店が費用に見合った価値を提供できているかどうかを(さらには広告主ではなく代理店自身のために広告費用が使われていた場合はその費用の返還も含めて)検討し、代理店の変更やインハウスでのメディアバイイングに切り替えるマーケターも出てくるかもしれません。

裁判になる可能性もありますが、Business Insiderが業界の専門家に意見を聞いた限りでは、多くの時間および費用がかかることと、マーケターの意思決定における”怠慢”をCFOおよびCEOに露呈することになる可能性があることから、その可能性は小さいという見方を示しているようです。

参考:
Media Transparency Initiative: Overview | ANA

ANA report alleges widespread ad agency kickback schemes – Business Insider
ANA report shines the light on sketchy ad tech deals – Digiday

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