なぜAOLとMicrosoftは新たなパートナーシップを結んだのか

Pocket
Share on LinkedIn
LINEで送る

先週6月29日、AOLとMicrosoftのパートナーシップ締結が発表されました。この動きが両社にとってどのような意味を持つのか、今年の5月にAOL買収を発表したVerizonの思惑も含めて、簡単にまとめてみたいと思います(過去記事「なぜ米ベライゾンは動画・モバイル・プログラマティック広告に力を入れるAOLを買収するのか」もぜひ併せてご覧ください)。

Microsoft
photo credit: TechStage

今回のパートナーシップで注目したいのは下記の3点です。

  • MicrosoftがAOLへ、世界の主要な市場(米国、英国、日本など9ヵ国)で保有するディスプレイ、モバイル、動画広告の販売を委託
  • (今まで利用していたGoogleに代わり)AOL(Verizon)は2016年1月1日よりBingの利用を開始
  • Microsoftの広告事業売却に伴うAOLでの社員1200名の受け入れ

Gartner ResearchのディレクターであるMartin Kihn氏は、AdExchangerにて「今回のMicrosoftとのパートナーシップによって、AOLはますますパブリッシャーではなくアドネットワークの様相を呈してきており、Verizonが今後もハフィントンポストといったニュースビジネスを続けていくと信じるのは難しい」とコメント。

AOL買収の目的にも重なりますが、今回のMicrosoftとのパートナーシップで、Verizonは”プレミアムコンテンツ”ではなく、ネットワークやテクノロジー、プラットフォームが欲しい(=Microsoftの持つXboxやSkypeのネットワーク/広告在庫を獲得することが目的である)ことが、より明確になりました。

一方で、Bing検索以外の広告事業から手を引く動きを見せているMicrosoft。広告事業から完全に撤退するわけではなく、検索広告に引き続きコミットすることを強調していますが、業界関係者はBusiness Insiderにて「Microsoftはこれから数年かけて広告セールスチームの解体を進めるでしょう」と伝えています。

Screen shot 2015 06 30 at 11 04 38 am
画像:Why Microsoft is exiting the display advertising business – Business Insider

MicrosoftのCEOであるSatya Nadella氏が掲げる「モバイルファースト/クラウドファースト」の戦略とは調和しない広告事業。しかし、Bingは2015年3月における米国デスクトップ検索市場シェアで、Googleの64%に続く20%で第二位につけているとともに(Yahooは13%で第三位)、その検索広告の大部分が”セルフサービス”で回っているため、利益をあげている検索広告から手を引く必要はまだないと判断していると考えられます。

Microsoftのディスプレイ広告シェアは740億ドルと言われていますが、eMarketerによれば、2014年のディスプレイ広告市場が22.4%の伸びを見せた一方で、Microsoftのディスプレイ広告売上は15.5%減少していたようです。

検索広告と比べて多くのサポートが必要にもかかわらず、売上にも他の事業とのシナジー効果も見込めないディスプレイ広告。それらをAOLに委託する”見返り”として、AOLのネットワークおよびVerizonの持つモバイル(のデフォルトブラウザ)にBingを浸透させ、検索シェアを伸ばすことが出来るのは、Microsoftにとっても明らかにメリットでしょう。

このパートナーシップで最後に注目しておきたいのが、Microsoftの広告事業部の人材について。4,500名の従業員を抱えるAOLが、1,200名の新しいセールス、マーケティング、ビジネス開発、エンジニアといったMicrosoftのメンバーをどうやって受け入れるのかに関して、今の所、レイオフは行わないと言われているようですが、多くの人がその発表には懐疑的です。

Microsoft側の中間管理職レベルの従業員は「AOLは全従業員を必要としていないでしょう。膨らんでしまった高コスト体質の事業部が、そのままAOLに移動してよくなるとは思えません」とAdExchangerにてコメントしています。これからの動きとして、レイオフを厭わないAOLのCEO、Tim Armstrong氏が”汚れ役”を引き受け、Microsoft側の優秀な人材のみを選りすぐる可能性は低くなさそうです。

業界内で注目を集めた今回のAOLとMicrosoftとのパートナーシップ。これらの一連の動きに取り残されてしまっているのがYahooでしょう。3年前、当時の暫定CEOであったRoss Levinsohn氏が、Microsoftに同じような取引を持ちかけたものの失敗していたようですが、AOL/VerizonとMicrosoftのパートナーシップを横目に、何かしらの策を打てないままであれば、Yahooはこれからどんどんシェアを落とすことになりそうです。

参考:
AOL and Microsoft Expand Global Enterprise-Level Partnership | Business Wire

Microsoft-AOL Deal Affirms Verizon’s Interest In Cross-Platform Media
Why Microsoft is exiting the display advertising business – Business Insider
The Big Question For Many Microsoft Ad Sellers: How Long Will AOL Jobs Last? | AdExchanger
Why The AOL And Microsoft Advertising Deal Matters | Fast Company | Business + Innovation

The following two tabs change content below.
アメリカをはじめ、海外のデジタルマーケティングに関する情報を 海外の情報源から集め、最先端のトレンドを提供しています。 皆様のビジネスに役立つ記事づくりを目指します。